披露宴と披露宴の間でパニック!
元ホテル総支配人 MASATOSHI
2019.03.16

一つの披露宴が終わって、次の披露宴が始まるまでの間にどんなドラマがあるのでしょうか
1本目の披露宴が長引くことがある
一生に一度女性の皆さんが「お姫様」になれる日。
自分の望みを全て叶えてもらえる日。それが結婚式。
では、みなさんはその「結婚式」裏側というがどのようなモノか実際に想像したことはありますか。
一つの披露宴が終わると同じ会場で次の披露宴が始まるまでは、普通1.5時間は空けてあります。
しかし、披露宴は様々な理由で押します。
例えば
・披露宴の頭で主賓のスピーチが長すぎて、料理スタートができなかった。
・お色直し中に新婦さんが気分が悪くなり、別室で休憩したので、戻ってくるまで時間がかかった。
・新郎友人たちの余興が盛り上がりすぎて、それだけで20踏分も使った。
・新婦のお父さんがトイレに行ったまま帰ってこないので、花束贈呈が待ちになった。
・単純にお客様がみんな食べる速度が遅く、お皿を下げられなかった
こんな時、進行を司るキャプテンは苛々するのです。

殺気立つ恐怖の「ドンデン」とは?
長引いた披露宴がようやく終わり、さあ、あと1時間で次の披露宴が始まります、てなことになると緊急事態です。
通常のアルバイトスタッフだけでは到底手が足りないので、身体の空いているサービス部門のスタッフや、時にはセールススタッフまで駆り出されて、まず撤去です。
この撤去と次の設定を全て含めて「ドンデン」という言い方があります。
ドンデン返しという言葉から来たのでしょうか、かなり古い言い方ではあります。
短い時間でのドンデン、それはもう恐怖としか言いようがありません。
まずキャプテンは、アルバイトを含むチームに危機感を与えるために、通常よりもずっと厳しく叱咤激励します。
そうしないと、全体のことが見えないアルバイトちゃんは機敏に動かないのです。
時には周りが凍りつくような怒号や、「殴るんじゃないか・・」と心配するような場面もあります。
知らない人が見ると最初から最後までずっと怒って怒鳴りまくっている感じです。
放送禁止用語(?)も飛び交います。
キャプテンはどんなことで怒るかって?
・お皿の周りのナイフフォークの置き方が間違っている
・ワイングラスに曇りがあるのを発見できていない
・テーブルクロスの広げ方が雑でみっともない
・ものを運ぶ時の導線が良くない
・ボーッと突っ立てる奴がいる
・全体に作業がトロトロして遅い
などです。
ドンデンの間に着々とリハーサルを進める各分野のプロ達

そしてその間を縫って、音響・照明・写真・映像・花・音楽などのテナント会社スタッフが、自分たちに必要な準備を進めています。
音響はマイクチェックがあるので、必要な音をガンガン出します。
照明はスポットライトをどこに吊って、どちらに向けるかを調整(シューティングと言います)します。
カメラマンは撮影のポジションを見るために歩き回り、テスト撮影。
映像は音響と被りながらもムービーの投影テストです。音を出したいので、音響さんの作業が終わるのを今か今かと待っています。
花屋は新郎新婦席(高砂と言います)や各テーブルのお花を挿して行きますが、出来上がるまで何度も全体のボリュームや形を見て手直しします。
音楽会社は演奏者を連れてきて、リハーサル音出しをしようとするのですが、音響や映像と被ってしまうので躊躇しつつ進めています。
こんな中で新郎新婦のお友達が歌やダンスの余興リハーサルをされるとなると、当然それが優先です。
この人たちは裏事情がわかっていないので、時間は永遠に自分たちのもの、という意識で繰り返し練習します。
一度もマイクチェックのできていないピアニストやムービーと音を出したい映像スタッフは気が気ではありませんが
苛々しているキャプテンに何度も催促すると「わかってるって!」と怒鳴られます。
ドンデンはまさに戦場です。
しかし「こんなことでは絶対間に合わない」と思われたぐちゃぐちゃの会場も、キャプテンの捌きとみんなの協力で見事に美しく仕上がるのですから、不思議というか、見事と言わざるを得ません。
全ての準備が整って、テーブルの上に番号プレートが置かれ、サービス要員が各テーブルにスタンバイします。
サブキャプテンが「ドアオープン」を叫び、ドアが開けられる・・・この瞬間の張り詰めた空気が、私は大好きです。
限られた時間内で全てを滞りなく終えるために、各方面のプロが協力し合い、作業を進める。
その間は殺気立って気が抜けないが、この緊張のおかげで無事次の宴会が始まる。